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画枠と一体感のある作品

大きな潮流の中でも相変わらず昔ながらの金粉処理を施した画枠に拘っていた地域も残っていたことがわかっており、その変遷を示すおもしろい作品がありますのでご紹介しましょう。ロンドンにあるナショナルギャラリー所蔵の作品でJan van Coninxloo and Associates(ネーデルラント派)による16世紀頃の作と言われる「The Virgin and Child Enthroned(玉座の聖母子)」で、最近まで黒ずんだ額縁に収められていたものと見られていましたが、同美術館でその額縁の汚れを落とすため整備作業を進めていたところその額縁の下から金粉処理の地が表れてきたという報告がされています。これは当初金粉処理の施された絵板と一体となっていた内枠にちょっと不自然ではある額縁がつけられたものぐらいにしか考えられていなかったもので、実際は絵板同様な処理を施した立派な画枠があり一体感のある作品に仕上げられていた事に何も疑問に思わず展示していた事になり、額縁に対する当時の考え方を推し量る面白い話としてご紹介しました。