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木としての良さを最大限生かした額縁

絵画と一体となった画枠を備えた祭壇画や肖像画などから発展していったとされる額縁は、収める絵画を引き立たせる目的もあってか多くのものが手の込んだ彫刻に金箔による表面処理を施すなどして競って豪華さをアピールしようとしていた感があります。ところがそんな流れに逆らうように16世紀半ばを過ぎた頃から各種木材の良さを強調するが如く艶やかな表面処理を抑えその木材の特徴を生かした、まさに現代に通ずるような額縁が登場するようになってきました。そこに使われた木材は、上は高価ともいえる黒壇から、下はその辺で見かけるクルミやツゲなどといったありふれた木材まで、まさに試行錯誤するかの如く各種のものが使われていたと言われています。しかも意匠的にもそれまでのどちらかと言えば手の込んだ彫刻と言われるものが施されていたものから、うって変わって質素なものへとその傾向をかえていったように見受けられます。とはい言っても、外周の金箔による表面処理は残しつつという、いわば折衷案的なものともいえなくもありません。そんな額縁の一例がロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されているPieter Brugel the Elder(ピーテル・ブリューゲル)作と見られる「三博士の礼拝」を収めた額縁と言われています。材質はトスカーナ地方に見られるクルミ材が使われており、よくよく見ると外縁には金粉の表面処理も施されているという細部にわたっての心憎いばかりの心配りから織りなすその出来栄えは、見る者を引き付けずにはいられない作品と言われています。